ブックレビューシリーズ(3)
「文科系人間のためのAI論」 高橋透 小学館新書
ヒト化するAI vs サイボーグ化する人
サブタイトルは「ヒト化するAI vs サイボーグ化する人」。人間の欠損した器官のエクステンションとして人工の器官が活躍する。手足、目、さらに脳も?つまり、人のサイボーグ化。そしてヒトの作ったロボットにAIが搭載され、ロボットがヒト化する。すべてのモノがインターネットでつながり、AI(人工知能)を持つようになる。すでに自動運転の車がすごいスピードで開発されている。かつてIBMがコンピューター生産部門をレノボに売って、自らはシステム作りのほうに特化したように、家電も車もモノそのものの生産より、それとつながるAIを使ったシステムのほうがビジネスになってくるのだろう。
コンピューターが人類を超える日
AIも確実に進歩し、2045年にはAIが人間の知性を追い抜くシンギュラリティ問題。その日は確実にやってくる。AIとの共存社会(100億のAIと100億の人間が共存する社会)はすぐやってくる。ロボット化する人間、人間化するロボット。もはや人間ではなく、「ポストヒューマン」という単語さえ飛び交っている。
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こちらに関しては詳しくは
「2045年問題〜コンピューターが人類を超える日」(松田卓也 廣済堂新書)
「人工知能の核心」(羽生善治 NHK出版新書)
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ポストヒューマン?
この流れの中で「人間」とは何かが問われる。この本の著者は西洋哲学を専門とする哲学者であり、哲学者がAI論を書いているところに意味がある。足、手、目、心臓などが機械となり機能すればそれらを事故などで失った人には助けになる部分もある。しかし、「脳」がコンピューターにアップロードされるとどうなるのか?記憶をコピーして保管できるので、認知症には役立つだろうが、やがて、それが進むと過去現在、世界中のすべての「脳」がつながり、「脱個体的集合体」となるという。SFの世界が現実化する?
興味ふかいのはヒトは自分の「似姿」を創造するようになるという。アシモを作り出した人間の最終目標はもっとヒトに近い、いやヒトを凌駕する存在をクリエイトすることだろう。神の「似姿」に作られた人間は、やがて自分の「似姿」を創造し、古い人は過ぎ去り、新しい人(ポストヒューマン)が誕生する?!
AIで社会はどうなる?
「理系脳で考える」 (成毛眞 朝日新書)によると、2030年、49%が職を失うという。そして理系脳のクリエイティブな人が生き残る。
文系脳は 理系脳は
1. 転職や異動には苦手意識 → 新しいもの好き 過去に固執しない
2. スマホは長く大切に使う → 最新の機能を追い求める
3. 失敗はとことん反省する → 創造的な人は1秒も反省しない。
経験値が増えたと思うだけ。
4. 政治や経済の議論に興味がある → 自分のできる範囲を限定する。
5. 話すときは共感を重視 → 行間を読まずに、正確な情報を得る
共感重視の腹の探り合いだと、正確な情報が得られない。こちらも正確に話す。だから逆に信頼されるという。
AI 社会適応のために仕方ないのかも知れないが、そうだとすると日本的な思考や人間関係も変わっていくようだ。将棋の羽生さんは、将棋ソフトには「恐れ」がないという。従って大胆な手も打てるのだと。なるほど。しかし、ヒトには「恐れ」の感覚は大事ではないだろうか。
AIがヒトの知能を越えれば、判断をAIに委ねるようになる。膨大なマーケティングのビッグデーターから経営判断までAIがやるようになる。今でも電車の乗り換えや道案内くらいはスマホに聞いて、答えをもらえる。AIが判断すれば、人の判断力は衰えるのか?実際、自分などは、すでにワープロソフトのおかげで、漢字が書けなくなっている。
さらに・・・
少子化がどんどん進む日本社会で、AI女性で独身男性は満たされてしまうのか?めんどうな結婚生活はいらなくなってしまうのか? 冷蔵庫のものが足りなくなれば、自動的にAIが注文し、家の宅配ボックスに届いている。朝食くらいはAIが作ってくれる。通勤途中もAI友人が今日のニュースを知らせ、メール処理もしてくれる。会社でもわからないことは何でもAI君に聞いて判断する。帰宅後はすでに沸いている風呂に入り、ヘッドギアをつけて仮想世界で山登りしたり、ハンティングをしたりして遊び十分楽しい。もちろん、AIが会話のお相手もする。「今日はどうだった?仕事うまくいったの?」なんて聞いてくる。
あの映画 「her」の世界が現実となる。
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『her/世界でひとつの彼女』は、スパイク・ジョーンズ監督・脚本による2013年のアメリカ合衆国のSF恋愛映画である。コンピュータのオペレーティングシステム(人格を持つ最新の人工知能型OS)に恋をする男を描いた物語である。2013年10月にニューヨーク映画祭でプレミア上映され、同年12月18日にアメリカ合衆国で劇場公開された。
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そんなのはまだかわいい話だが、ミサイルにAIが搭載されると考えると恐ろしい。AI搭載のロボット戦士も現れるだろう。AIの場合、ディープラーニングで進化する。すごい速度で膨大なデーターを処理できる。人間より賢くなったロボット戦士たちが人間を支配するというSFのような話も、おとぎ話では済まなくなる。
教会はどうなっちゃうのか?
こうなると妄想が膨らむ。当然、クリスチャン生活や、教会も変わってくるだろう。ここからはあくまで、私の妄想ですが・・・
過去の優秀な説教者のビッグデータからAIロボット牧師が説教する。過去のカウンセリングデーターからAI牧師が適切な聖句を引用してアドバイスする。わからないこと、困ったことにAI神アプリがすぐに答えてくれるとなると、悩まなくなる。すべてに、すぐに答えが出る。それはいいことなのか、悪いことなのか?すでにAIが会計士、弁護士の仕事を奪っているという。⚪⚪️師というデーターと技術を隠し持った存在が取って代わられつつあるという。それなら、牧師や宣教師も?
AI社会はもう止められない
障害者のために意識しただけで操作できるロボットがすでに開発されつつある。つまり、思っただけで、テレビのチャンネルを変えたり、ものを仕分けして箱に入れたりできるようになる。これは人間のエクステンションとしてのロボット。AIが症状を判断し診断を下る。誤診を減らすことができるかもしれない。医学や介護の世界でとてつもない貢献をしてくれる一方、武器や犯罪、テロなど、とてつもなく危険な面もある。
今時、ワープロを使っている人はいない。ガラケーよりスマホが増える。コンピューターやメールは嫌だと言う人は仕事につけなくなる。周りの迷惑にさえなってしまう。子供の学校でも生徒にコンピューターが支給され、先生との連絡や宿題もそれでやっている。連絡手段が電話とファックスだけの人は災害時にも連絡がとりにくい。職業観も変わっていく。Youtuberで年間5億かせぐ若者がいる。プロのゲーマーが大会で優勝すると億の金を稼げる。Eスポーツ(コンピュータゲーム)がオリンピックの競技になる日も近い。
未だに電気を使わない、アーミッシュのような人々もいることはいるが、世界の大勢は変わっていく。好き嫌いの問題ではなく、ものすごいスピートで変わってゆく。多くの若い牧師はスマホを持ち、当然のごとくラインやフェイスブックで連絡を取り合っている。AIとの共存社会に進んでいくしかないのだ。
知らないがゆえに恐れ。恐れるがゆえに、批判する。しかし、「昔は良かった」「昔のようなリバイバルを」ではなく、この時代の神の戦略を模索していくしかない。この時代の教会形成を模索していくしかない。そして21世紀の神にはそれがある。むしろ期待したい。これからとてつもなく面白いことをやるクリスチャンも出てくるだろう。
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意味ある人間関係と祈りで広がるキリスト中心のコミュニティ
東京メトロ・コミュニティ(TMC)