昨今、右派論客の本が多くなっていると感じるのは私だけだろうか?保守派の人の本を読んでみると、以下の論点が浮かび上がってくる。
1.侵略戦争ではなく、国の存亡を賭けた自衛戦争だった。
2.真珠湾攻撃のことはアメリカは事前に知っていたが、わざと攻撃させて
日本に開戦させた。
3.ポツダム宣言検討中に日本が負ける事をわかってながら、原発を落とした。
4.東京裁判は占領軍であるアメリカが一方的に敗戦国日本を裁いた不当な裁判である。
5.GHQは自虐史観的戦後教育で日本人を骨抜きにした。
それゆえ、「戦後レジームからの脱却」、GHQに汚される前の「日本を取り戻す」という結論になる。当然、GHQの押しつけ憲法も改正が必要である。国防軍を持ってフツーの国になるべしとなる。
ある人々は、国家存亡の危機で、「開戦は日本国民を守るために仕方なかった」という。しかし、そんな自国の存亡の危機の時に大東亜共栄圏などと呑気なことを言っていられたのだろうか?他の国の独立を助ける余裕などあったのだろうか?本音は、国益第一だろう。戦争には国民を納得させる「大義」が必要なのだ。どの国でもそうなのだ。さて、マッカーサー自身が帰国してから「あの戦争は日本にとって自衛戦争だった。」と証言したらしい。しかし、国内にも石橋湛山や内村鑑三など小日本主義、不拡大主義を唱えた指導者もいたのだ。何とかならなかったのか?石橋は満州、朝鮮を手放し、独立させることで、逆に世界から信頼され、英米を困らせることができると、したたかな外交戦略を唱えていた。ただ、あの「空気」の中、開戦はやむを得なかったのだろう。遅かれ早かれ軍の暴発は起っていただろうと指摘する声もある。実際、多くの国民やマスコミは戦争を支持した。当時は領土拡大=国益ということだったろうが、結論的にいうと、ハルノートの言う通り、戦後は、日本の領土は明治時代の領土に逆戻りしてしまっている。だったらあれは何だったのか。そして、戦争は国民を守るためではなく、国=国体 (天皇と一部指導者)を守る戦いだったのではと疑われる?多くの兵士が戦場で無謀な戦略のため命を落としたことも事実。
さて、今日、自民党が本気で9条の改正を叫んでいる以上、論点を整理しておく必要がある。
日本国憲法は押しつけ?
占領下の日本は直接アメリカの軍事下になる可能性もあったが、日本の国会を通して日本を統治する型を取った。アメリカの占領下政策がすべて正しいとは言わないまでも、「一億火の玉」「天皇陛下万歳」と人間魚雷や神風による玉砕という狂気の中にいた日本人を民主主義に変更するには、ある種の「強制」(毒抜き)は必要であったと思われる。アメリカは新しい日本再建に「天皇制」を利用しようとしたことは事実。しかし、結果的に象徴という形で「天皇」が、一宗教法人という形で「靖国神社」も残された訳だ。天皇退去、靖国抹消もありえた時代風潮の中で。そういう意味ではGHQは、日本人の心を全く踏みにじるようなことはしていない。アメリカ側は日本をよく研究し、紛争の怒らない様うまく統治したのではないか?
さて、憲法においてもマッカーサー3原則(天皇制存続、戦争放棄、封建制度廃止)は譲れないと迫られたことはあっても、日本の憲法学者、鈴木安蔵らの憲法研究会などの民主的憲法の提案も受け入れ、あの戦後の混乱期にしてはすばらしい憲法(主権在民、人権尊重、平和主義)が制定されたのではないだろうか?憲法草案確定時に首相であった幣原喜重郎(しではら)は「全然武器の使用の機会を無くす事を最先の目標」とし戦争放棄、平和産業の発展を訴えた。第55代内閣総理大臣の石橋湛山も武力放棄の平和憲法は「人類最高の宣言」と高く評価している。石橋は、そのようにしてファシズム戦争への不屈の抵抗を見せた。戦後68年、この憲法で生きてきて国民的な反発が出た訳でもない。自衛隊は一人も戦場で人を殺していない。その事実自体が、国民に受け入れられてきたと言えるのではないだろうか?
アメリカ占領軍が、天皇を象徴として残しつつ、軍国主義カルトの毒抜きをし、日本国憲法を制定し、民主主義国家の土台を築き、その後日本が、世界第二位の経済大国にまで上り詰めた復興を見る時、アメリカは良くやってくれたのではないだろうかと思わざるを得ない。戦後には戦勝国4カ国による日本分統治構想というのがあった。それが実現されていれば、北海道、東北はソ連領、四国は中国、九州はイギリスなど民族分断の恐ろしいことになっていたのだ。東北共産主義地区など誰も望まないだろう。
戦争放棄は世界の非常識?
19世紀までは植民地獲得のための戦争が正統化されていたが、20世紀に入って禁止された。現在の国際法では国際間の紛争を武力解決することは禁止されている。従って日本憲法だけが特殊なわけではない。戦争放棄を書き込んでいる憲法も世界に多数ある。9条第一項目はそういうわけで、改正する必要はないと思われる。
2項の武力の保持に関しては、国際的に3つの例外がある。1)個別的自衛のため 2)集団的自衛のため 3)国連安保理の決断で国連軍が動く時 は武力を使用していいことになっている。日本の場合は9条により1)の個別的自衛権だけが許されているという理解。自衛のために最小限の武力装備が許される。したがって自衛隊は合憲。
そもそも自衛隊は戦争放棄を勧めたアメリカが朝鮮戦争で出陣し、日本の治安(特に共産軍の侵入)に不安をもって警察予備軍(7万5千人募集)を作らせたのがきっかけ。占領直後は自衛を含む戦争放棄を勧めたアメリカが、逆コースで、再軍備するよう促すが、吉田首相が頑として断った。(反吉田の鳩山一郎は、再軍備、憲法改正を唱っていた)結局、警察の増強という型で進められる。それが以降、保安軍となって、自衛隊になった。
終戦直後、占領軍のアメリカとしては天皇崇拝軍国主義カルトの毒抜きとして、日本の全き戦争放棄(自衛含む。占領下だったので当然米軍が保護するので)を望み、新憲法にマッカーサーの3原則(戦争放棄、天皇制維持、封建制廃止)、を盛り込むよう命じた。これを受けて日本側で憲法を作成、内閣で承認。しかし、朝鮮戦争を契機に冷戦時代を迎えたアメリカは方針を変えた。アメリカは日本が早く復興し、経済力をつけて共産主義の防波堤となるよう、そのために軍隊を持つよう願ったのだ。そのために圧力をかけて被侵略国への賠償金を少なくさせ、IMFからも抱負な資金を投入する。反共産陣営として日本を取り組み、米軍基地を置く事で日本の防衛を肩代わりすることとなる。
サンフランシスコ条約で独立主権国として再出発した日本は自衛権が許された。しかし、集団的自衛権は、9条の縛りで行使しないことになっている。歴代の内閣は集団的自衛権を行使しないという立場をとってきた。従って、これを憲法解釈でやろうとするのは無理がある。現在の憲法解釈は歴代の憲法学者が議論を重ねて到達した結果であり、それを踏みにじることはできない。しかし、現在の安倍内閣は憲法解釈を変えて、手段的自衛権行使を考えている。
歴史が語る問題点
1)満州事変から南京攻略、太平洋戦争へと、内閣は不拡大路線、外交努力で戦争回避を努めたが、結局、軍に押し切られるようにして戦争に突入、戦争に反対していた天皇もそれを追認することとなる。軍は「力」を持つので、邪魔者を消せる存在となる。(5:15事件、2:26事件)「力」による恐怖政治、軍の暴走は起る可能性があるし、現に起った。
2)第一次大戦後、莫大な戦争賠償金を負わされた上、アメリカ発信の世界大恐慌により経済窮地に陥ったドイツでは、ヒットラーの登場を国民が支持するようになっていく。右派巨大与党と共産党という構図で、今の日本によく似ている。日本でも満州事変頃からラチがあかない内閣より、軍を支持するようになったし、一度戦争が始まればメディアも煽り、国民も応援する。つまり、戦時下の異常な興奮の中では、シビリアンコントロールなどできないのだ。
3)武器を持てば使いたくなる、挑発したくなる。相手も攻撃しやすくなる。より緊張が高まる。緊張する「現実」に対処する必要があると言われるが、その「現実」をつくっているのは「私達」であることも忘れてはいけない。
4)「自衛」「集団的自衛」の名のもとに「戦争」が行われてきた。それらは
戦争の言い訳になることもある。
朝鮮戦争時、警察予備隊を募集したが、職を求める人が多かったため7万5千人はすぐに集まったという。今日、自民党の石破氏は国防軍を作っても徴兵制にはしないと言っている。今後、仕事の無い若者が自衛隊志願することもありえるだろう。しかし、何と言っても少子化である。国防軍を作った後、兵士が足りなければ徴兵制も議論に上るだろう。問題は、今の日本の若者が戦場で戦えるのかというとこで、精神を鍛えるのに、国家神道や天皇カルトが復活しないのかという心配もある。日本の精神的支柱は、今のところ、それしか無いのだから。
いずれにしても憲法は国の理想を掲げている。事実、過去70年近く、日本の自衛隊が一人も戦場で殺していない。そのことを誇りにしていいのではないか。世界はそれをバカにするどころか尊敬するのではないか?フツーの国家に成り下がるより、理想に現実を近づけるよう世界にメッセージを発する国家としてこそ存在意義があるのではないだろうか?
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やはり防衛や国際貢献は必要。------- さらに議論が必要な9条の諸問題
ただし、改憲反対を叫ぶだけでなく、国際的な、現代的な状況の中で護憲であっても国防戦略をきちんと考える必要がある。聖書が言うように全ての人が罪人なのであり、脱線する可能性はある。第二次世界大戦を避けられなかった人間に大三次世界大戦が絶対に無いとも言えない。そこまで行かなくても隣国との紛争は現実、目の前にある。優先は戦争予防外交。しかし、同時に国民を守るために国防は必要である。今日はすべての戦争・紛争が世界の目にさらされる。理不尽なことはやりにくくなっている。メディア、インターネットによる国際世論や国連の決議などという要素も考慮すべき。
1)平和維持海外派遣の場合の安全は? PKO活動で攻撃された場合
戦闘地には送らないが原則だが、戦闘地の定義は?自衛隊とは別に「海外協力隊」を作る案もある。日本は戦争を起こさないための予防活動、すなわち平和構築活動に積極的に貢献すべきだろう。
2)海外邦人の救出の際、攻撃された場合
ピストルを使ったり正当防衛は、現在でも許されるが、それで十分か?
3)国内の米軍基地問題
沖縄はじめ、国内の米軍基地を無くすには、日米同盟、安全保障戦略を再考しなければならない。以下幾つかのオプション
a. 日米同盟を廃棄、完全に日本のみで防衛体制を作る。
b. 日本とアジア諸国で新しい防衛戦略を作る。ただし、戦中の大東亜共栄圏の悪夢がまだアジアにあり実行は難しいだろう。
c. 日米同盟は保ちつつ、同等の関係として日本は自衛隊(国防軍)が守ることとし、米軍に国内から去ってもらう。沖縄から米軍の完全撤退を計画するなら、未来を見据えた防衛戦略をきちんと作ることが先決。無防備でアメリカのプレゼンスが無くなると中国は進出する?
いずれものケースも非常に難しい。結局、現行の型しかないのか?
4)自衛とは国内での戦いのみか?
他国からのミサイル攻撃の場合に専守防衛では被害が出てしまう。危険がある「おそれ」で攻撃できるのか?「おそれ」防衛は正当か?グローバルな時代、たしかに防衛戦略は国内の防衛だけに留まらないだろう。
5)同盟国アメリカが自衛戦争を日本領海外でやっていた場合、共に戦わなくていいのか?いわゆる集団的自衛権の問題
現在、アメリカは日本を守るが、日本はアメリカを守る義務はない。そのかわり、日本国内に米軍基地を提供している。集団的自衛権を行使する場合、どこまでを「自衛」と考えるのか、誰がそれを評価するのか?現状の日米関係から言うと結局アメリカ主導の戦争に日本が巻き込まれるという構造だろう。ならずもの国家を制裁する「世界の警察」は必要か? 世界のために犠牲を払うのがフェア、日本は出兵すべきとの考えのアメリカ人宣教師もいる。聖書的な「戦争論」も含め、さらなる議論が必要。
6)国連軍に金だけ出すのではなく、出兵して犠牲を払うべきでは?独立主権国が「国防軍」を持つのは当然ではないか?
クリスチャンの多い、アメリカ、シンガポール、韓国でも軍隊がある。
クリスチャンでも意見が分かれている。1世紀の初代クリスチャン達の非暴力/殉教の姿と自衛、国防の関係をどう考えるか?
7)防衛の型がかわる。
今後、今までのような戦争(国と国)は起りにくいと考えられるが、むし
ろテロや紛争(センカク問題)が多発してゆくだろう。これにどう対処するのか?国際紛争を武力で解決しないというが、相手が話の通る相手でない場合どうするのか? サイバーテロ、原発テロは?これらは、やられたらもう、おしまいで手遅れ。専守防衛でいいのか?
8)現在の自衛隊はあくまで警察の範囲で軍隊のルールが適用されない。
していいことのリストで制限されている。(通常の軍隊はしていけないことだけリストされており、それ以外はやっていいことになっているので自由に動ける。)現在の自衛隊で、戦いのために実践的に機能できるのか?
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参考文献
「憲法9条の軍事戦略」松竹信幸 平凡社新書
「集団的自衛権の深層」松竹信幸 平凡社新書
「憲法が変わっても戦争にならない?」高橋哲哉・斉藤貴男 ちくま文庫
「9条どうでしょう」内田樹・小田嶋隆・平川克美・町山智浩 ちくま文庫
「憲法がヤバい」白川敬裕 ディスカバー携書
「あの戦争は何だったのか」保坂正康 新潮新書
「日本戦後史」男の隠れ家時空旅人Vol.15
三栄書房
「すべてがわかる太平洋戦争」世界情勢を読む会 日本文芸社
「日本人は何を考えてきたのか」大正篇/昭和篇 NHK取材班 NHK出版
「キリスト者の戦争論」岡山英雄/富岡幸一郎 地引き網新書
保守論客の本
「国防軍とは何か」森本敏・石破茂・西修 幻冬舎ルネッサンス新書
「渡部昇一の昭和史」渡部昇一 ワック
「戦後歴史の真実」前野徹 扶桑社文庫
「真相箱の呪縛を解く」櫻井よしこ 小学館文庫
「侵略の世界史」清水馨八郎 祥伝社黄金文庫
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I for Japan
Japan for Jesus
Jesus for all
All for God
(内村鑑三)
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