2020年10月2日金曜日

どうなる中東?アブラハム合意の意味するもの


「アブラハム合意」とは何か?

トランプ大統領が2021年のノーベル平和賞候補に推薦された。「なんでトランプが!?」と多くの日本人は思うだろう。

 

この1ヶ月で歴史的な動きがあった。2020年9月15日に、トランプ大統領が介在して、イスラエルとアラブ首長国連邦、およびバーレーンが国交正常化の締結を取り交わした。歴代の大統領が成し得なかった中東和平への大きなステップだ。この締結は、「アブラハム合意」と呼ばれている。確かにイスラエル人もアラブ人も、それぞれアブラハムという同じ先祖を父としている。アラブ人はアブラハムが奴隷の女ハガイに産ませたイシュマエルの子孫だ。「同じ父を持つのだから仲良くしよう。」との意味らしい。

 

日本では大きな話題にはなってないが、聖書を信じる者からすると歴史的な出来事と言える。さらにオマーン、モロッコ、スーダン、またサウジアラビアなどが追従する可能性があるという。もちろん、ここまで来るには長い期間のイスラエル首相の努力があったことも事実だ。






 

 

アラブの脅威、イラン

こうなった一番の背景はイランの脅威だ。1979年のイラン革命で、この国はイスラム原理主義の国となった。つまり正に「剣か、コーランか」であり、彼らは、イスラムワールドを支配したい。イランはシーア派、アラブ諸国の大半はスンニ派という違いもあり、すでに敵対している。実は、世界のイスラムの9割は穏健派で、違う主義の国とも平和条約を結ぶ現実主義者だ。しかし、原理主義の場合、妥協は許されないので、後は「征服」しかない。原理主義的には「ジハード」つまり、聖戦で殉教する者は確実に天国にいけるという信仰に立つので、テロが正当化される。だから自爆テロも後を絶たない。

 

幸い、イスラエルを取り巻くアラブ諸国は現実主義者となっているので、今回の締結に及ぶことができたのだ。サウジアラビア半島を支配したいイランに対峙するには、ハイテク技術、情報能力、戦闘力に優るイスラエルと組んだ方が安全だという考えだ。今年、9月8日—9日にかけて、サウジアラビアの港が自爆ドローンにより攻撃されており、脅威が増していた。

 

今年(2020年)9月29日の国連総会でイスラエルのネタニヤフ首相は、こう述べた。

 

「アラブ諸国やイスラム諸国がさらに“平和の輪”に加わると確信している。すぐ、まもなくだ。」 一方で、演説では敵対するイランを非難。中東の平和にとって“最大の敵”だとして、「アラブ諸国と共に立ち向かう」と強調した。

 

もちろん今回のアブラハム合意にはパレスチナ人は猛反対だ。今まで味方だったアラブ連合に裏切られた形だ。現在22カ国からなるアラブ諸国連合(アラブリーグ)に、この締結を無効にするよう訴え出たが、歴史始まって以来、初めてパレスチナの要求が却下され、イスラエル支持となった。こんなことは今まであり得ないことだったのだ!確実に新しいステージに入っている。

 

 

イスラエルには何を意味するのか?

過去4回の中東戦争の主役だったエジプトは、1978年9月キャンプデービッド合意でイスラエルと和解している。その後、ヨルダン、そして、今回のUAEとバーレーン。つまり、イスラエルは1948年建国以来、今、一番安定した状態を手に入れたことになる。この国交正常化締結により、イスラエルは中東においての「国」の存在を確実にした。長年、周りを敵に囲まれていた状態から解放されたということだ。終末におけるイスラエルという国の存在感が聖書の言う通り高まってきている。

 

「その国は剣の災害から立ち直り、その民は多くの国々の中から集められ、久しく廃墟であったイスラエルの山々に住んでいる。その民は国々の民の中から連れ出され、彼らはみな安心して住んでいる。」(エゼキエル38:9)

 

これは終末時代、ロシアが諸国(トルコ、イランなど)を引き連れてイスラエルに攻め込んでくるとの預言だ。エゼキエル書38章に出てくるので、「エゼキエル戦争」と呼ばれている。(資料1参照)

 

1.「その民は多くの国々の中から集められ、久しく廃墟であったイスラエルの

  山々に住んでいる。その民は国々の民の中から連れ出され。。」(38:8)

  AD70年に国を失ってから1900年、流浪の民であったユダヤ人が故郷

  に戻り、1948年5月14日に国家宣言をしたことを持って、この預言

  が成就している。国が無ければ攻め入ることはできない。

 

2.「その国は剣の災害から立ち直り」(38:8)

  これはAD70年のローマ軍によるエルサレムの破壊、及び、その後の

  ホロコーストなどの苦難、そして、建国してからの4回に渡る中東戦争、

  などを指していると思われる。「今」は立ち直りつつある。エゼキエル戦争

  が黙示録20章のゴグ・マゴグの戦いだと解釈する人もいる。描写は確か

  に似通ってはいるが、平和な状態が千年も続いて後で、「剣の災害から立ち

    直り」と言うだろうか。

 

3.「彼らはみな安心して住んでいる。」(38:8)

  イスラエルは、今回の合意を通して、かつてないほど、「安定」「確固たる」

  そして「繁栄」した状態になってきている。さらに多くのアラブ諸国が追

  従すれば、さらに「安心」は強まっていくだろう。

 

4.「それはおまえが、略奪し、獲物をかすめ奪うため、・・・おまえは分捕る

  ために来たのか。獲物をかすめ奪うために隊を構えたのか。銀や金を運

  び去り、家畜や財産を取り、大いに略奪しようとするつもりか。」

                        (38:12−13)

  この侵攻の目的は「略奪」である。そのためにはイスラエルが安定して、

  豊かになっていることが前提だ。イスラエルは海水を水にする研究をして

  いる。高いハイテク技術がある。(インテルCPUの8割はイスラエル製)

  近未来のパンデミックのワクチンか?砂漠に穀物を栽培する技術か?敵が

  どうしても欲しいものがあるに違いない。

 

5.「ペルシャ(イラン)とプテも彼らと共におり、みな盾とかぶとを着けてい

  る。ゴメルと、そのすべての軍勢、北の果てのベテ・トガルマ(トルコ)

  と、その全ての軍勢、それに多くの国々の民があなた(ロシア)とともに

  いる。」

  現在、イスラエルの最大の脅威はトルコ(ベテ・トガルマ=元オスマン帝

  国)だ。かつてオスマン帝国時代、イスラエルの土地は帝国内にあった。

  現在、トルコはオスマン帝国復興を夢見ている。イスラム色を強め、軍事

  力にも力を入れている。リビア2つの政府の1つにテコ入れし、最近は旧  

  ソ連のアルメニアとアゼルバイジャン紛争でアゼルバイジャンを支援して

  いる。軍事活動を活発化してきている。きな臭さは増しているのだ。すで

  にシリア内戦解決のために、ロシア、トルコ、イランは同盟を結んでいる。

  シリアの中にイラン、ロシアの基地が11ほどある。彼らは、反イスラエ

  ルであり、すでに2018年、イランがシリア内からイスラエルへドロー

  ン爆弾を飛ばし、イスラエルはすぐに反撃している。今年も、9月初旬、

  イスラエルは2回、シリアのイラン人をターゲットに数カ所攻撃をしてい

  る。もう戦いは始まっている。

 

 

預言に関する混乱

ところがトランプ大統領が介入して、イスラエルと平和条約を締結したので、ダニエル9:27からトランプ大統領が反キリストではないかとの声がアメリカのクリスチャンの間に広がっているという。そして、現在、アメリカで起こっている大規模な山火事はそれに対する神の裁きだと。聖書が語る預言的出来事を時系列的にきちんと理解してないと、そういう誤解が生じる。

 

大艱難時代前に起こる2つの出来事は、「携挙」と「エゼキエル戦争」(エゼキエル38章)だ。そして、「引き止める者=クリスチャン」(IIテサロニケ2:6)が携挙されて取り去られるまで「不法の人=反キリスト」は現れない。あのロシアのチェルノブイリ原発事故が起きた時、チェルノブイリは「苦よもぎ」という意味なので、これは黙示録8:11のことではないかと言うクリスチャン達もいた。しかし、黙示録8:11は大艱難時代のことであり、我々はまだそこにいない。なので、こういう読み込みは混乱を招くだけだ。パウロは「主の日=大艱難時代がもう来たのか?」と混乱していたテサロニケの信者に、不法の人が現れるまで「主の日」は来ないのだと説き伏せ、落ち着かせたのだ。(IIテサロニケ2:2)今日まだ、反キリストは公に現れていないし、従って大艱難時代にも入っていない。ただし、今日、起こっているパンデミック、バッタの大軍による飢饉、異常気象と自然災害などは大艱難時代に増幅されて起こる苦難の予表であるとは言えるだろう。

 


アメリカの思惑

バイデン氏が大統領になるとオバマ政権の民主党時代の政策を踏襲し、イランに寛大な政策をとるだろう。トランプ大統領は中国にもイランにも厳しい態度で臨む。トランプ大統領としては、中東の平和を実現し、アメリカ軍をほぼ撤退し、その力を対中国に向けたい。香港で起こったことは台湾で起こる。毛沢東も成し得なかった台湾統一は習近平氏の夢であるし、これが実現すれば、その権力は揺るぎないものとなる。融和政策が効かないのを知っている習近平氏は武力行使に出る可能性が高い。しかし、台湾が支配下に入れば、次は尖閣、そして沖縄となる。そこでアメリカは本腰を入れて台湾を支援する。事実上の国交を結び、最新鋭の戦車や戦闘機を提供している。南シナ海には原子力空母(1隻に5000人搭載)2隻が巡回している。これではそう易々と手が出せない。




 

しかし、こうしてアメリカが中国に集中しているうちに、手薄になったイスラエルに嵐のように、一気にロシア同盟軍が攻め上る(38:9)こともあり得ない話ではなくなってきている。しかし、その結果は超自然的な神の介入によるイスラエルの勝利である。(38:21−23)

 

「多くの国々の見ている前でわたしを知らせるとき、彼らは、わたしが主

 であることを知ろう。」(38:23)



 

-------------------------------------------------------------------------------


資料1 「エゼキエル戦争」(エゼキエル38:1−9)

 

「さらに、私に次のような主のことばがあった。『人の子よ。メシェクとトバルの大首長であるマゴグの地のゴグに顔を向け、彼に預言して言え。神である主はこう仰せられる。メシェクとトバルの大首長であるゴグよ。今、わたしは、あなたに立ち向かう。わたしはあなたを引き回し、あなたのあごに鉤をかけ、あなたと、あなたの全軍勢を出陣させる。それはみな武装した馬や騎兵、大盾と盾を持ち、みな剣を取る大集団だ。ペルシャとプテも彼らと共におり、みな盾とかぶとを着けている。ゴメルと、そのすべての軍勢、北の果てのベテ・トガルマと、その全ての軍勢、それに多くの国々の民があなたとともにいる。備えをせよ。あなたも、あなたのところに集められた全集団も備えをせよ。あなたは彼らを監督せよ。多くの日が過ぎて、あなたは命令を受け、終わりの年に、1つの国に侵入する。その国は剣の災害から立ち直り、その民は多くの国々の中から集められ、久しく廃墟であったイスラエルの山々に住んでいる。その民は国々の民の中から連れ出され、彼らはみな安心して住んでいる。あなたは嵐のように攻め上り、あなたとあなたの全部隊、それにあなたにつく多くの国々の民は、地をおおう雲のようになる。』」

 

マゴグ:トルコ北のコーカサス山脈の北のエリア、すなわちロシア。エゼキエ

    ル38:15「北の果てのあなたの国」とあり、エルサレムからまっ

    すぐ北上するとモスクワを通る。北の果ての大国はロシア以外にあり

    得ない。

メシェク:モスクワの語源

トバル:トボリスク(ウラル山脈の東、シベリアの首都)

ベテ・トガルマ:トルコ、アルメニア地方

ペルシャ:イラン 

プテ:ソマリア

ゴメル:ドイツ (ゲルマニア)

                       (中川健一著 終末論Q&Aより)

 

 

資料2 建国以来のイスラエルの歴史

 

1947年に国連で、両者で土地を分割することが決定されたこと、 ・その分割は、ナチス・ドイツによる虐殺への同情と、第二次世界大戦中の連合国に対する協力への配慮から、ユダヤ人たちに有利な内容(土地の約56パーセント)であったこと、 ・パレスチナ人やアラブ諸国が反対するなか、この分割決議に基づき、1948年にユダヤ人がイスラエルを建国したこと、です。

 

アラブ「進歩派体制」は深刻な打撃を被り、196711月の国連決議242号採択で、その後の「中東和平」の指針となる、イスラエルを含む中東域内諸国の生存権保障(パレスチナ人民族自決権の否定)、イスラエル軍の占領地撤退が示され、これをヨルダン、エジプトは受諾した。イスラエルはパレスチナ全土を含む広大な占領地をつかみ、多数のアラブ・パレスチナ住民を抱え込んだ。この結果、アラブ諸国はイスラエルの国家的存在を否定することは困難となり、ロジャース提案(1970)に始まるアメリカ主導の「中東和平」づくりが動きだした。

                          (日本大百科全書)

 

1979年、アラブ諸国で唯一全ての中東戦争に参加していたエジプトが単独で、イスラエルとの平和条約に調印。エジプトの損失が大きすぎることからきた決定でした。その結果、イスラエルとアラブ諸国の直接的な衝突は影をひそめました。


-----------------------------------------------


意味ある人間関係と祈りで広がるキリスト中心のコミュニティ

東京メトロ・コミュニティ

Tokyo Metro Community (TMC)

執筆者:栗原一芳

Japantmc@gmail.com

 

 

0 件のコメント: