制度的、組織的な教会から脱出し、本来のあるべき教会を求めてオーガニックチャーチに向かう人が出てきています。大きな方向は間違ってないと思いますが、スモールグループ的なオーガニックチャーチには疑問点や課題も多々あるのです。今回、正直に分かち合います。
オーガニック・チャーチのいいモデルがない?!
「ペイガン・クリスチャニティ?」で目が開かれ、その後、フランク・ヴァイオラのオーガニックチャーチに関する著書を沢山読んで、大変影響を受けました。「ペイガン・クリスチャニティ?」によると・・・現在の教会のやっていることの90%は異教の教えを取り込んだもので、2000年の教会歴史の中でフジツボのようにこびり付いてしまっていると。そのまま教会は機関車のように走っているので、これは刷新では変えられない、「革命」が必要とぶち上げています。それではどうするかという理論を「Reimagining church」で、実践を「Organic Church Planting」で書いています。そのヴァイオラさんが、彼のブログだったと思いますが「ラジオ番組のインタビューでオーガニックチャーチのモデルを見せて欲しいと言われ、実はいいモデルがない、なので自分はしばらくオーガニックチャーチプランティングを休止しようと思っている。」と書いており、びっくりしました。もう10数年まえの話なので、今どうなのか、分かりませんが。うまくいかなかったケースで、メンバーはどうなったかというと・・・「信徒に負担がかかりすぎ、結局、既存の教会に戻ってしまうか、クリスチャンを辞めてしまうか、孤立した一匹狼クリスチャンになるか、いずれかだ。」と言っていました。これを読んだときはかなりショックでした。自分の家にメンバーを招いて毎回、食事も出していたスモールグループのリーダーが結局、負担が大きすぎて、やめてしまったケースを聞きました。
実は自分がフロリダに滞在していた時、近くのオーガニックチャーチに参加してみました。というより正確にはオーガニックチャーチを、かつてやっていた人、2名と会って色々お話しを聞きました。アメリカはリビングルームが広く、10人くらいは余裕で集まれます。そのような物理的有利性があるでしょう。また車社会なので、移動がマイペースで、終電に遅れる心配もありません。しかし、同時にアメリカは引越しも多く、かなりメンバーを失ったようです。やはり継続するのは難しいようですね。ただ、オーガニックチャーチは表に出ないので、また全数を把握できるような全体的なネットワークもないので、実際のところは分からないというのが正解です。
海外の成功例は聞くけれど・・・・
次に影響を受けたのは当時、ハワイ、カネオヘベイにあったラルフ・モア氏の牧会する「ホープチャペル」のケースでした。ホープチャペルは既存の教会で日曜礼拝をし、ラルフ氏がメッセージをしていましたが、週日の信徒によるミニ・チャーチ(スモールグループ)を積極的に実践していました。ラルフ氏は「ホープチャペルの伝道・牧会の70%はミニチャーチで起こっており、日曜の朝は30%」と言っており、その発想の転換に感銘しました。ただ、やり方としては、基本、ラルフ氏のメッセージで人を礼拝に集め、それをミニチャーチに振り分ける形です。自分としてはミニチャーチ的なものがベースで、必要な時に、励ましと方向性確認のために合同礼拝があればいいのではと思っています。また、ラルフの下で弟子訓練された若者がたくさん牧師となり活躍するようになりました。日本にも頻繁に来られ、セミナーで教えていました。「メガチャーチを作るより、小さな教会をたくさん作る方がいい。」「教会を生み出す教会」「教会員数より、弟子の数で真価を問うべし」などなど「アーメン!」と言いたくなる発言を沢山しておられます。最近は1つの教会の下にない、超教派的な、信徒が始める教会=マイクロチャーチにも言及し、アメリカの消防士さんが仲間と始めたマイクロチャーチの実例なども話してくれました。「日本の牧師は支配的すぎる、もっと信徒を励まし、送り出しましょう!」と言ってくれました。
ハワイのホープチャペルのように1つの教会の下でのミニチャーチは現実的で成功しています。これなら日本でもできるでしょう。しかし、実際問題、マイクロチャーチはハードルが高いです。個人的にはこちらに興味があるのですが、少なくも日本で良い実例を見ていません。アメリカでさえ、超教派的に「ムーブメント」としてマイクロチャーチが広がっているのは見ていません。つまりラルフのような人が関わり続けている必要があるという事でしょう。「どうぞ自由にやってください」と手を離してしまったらうまくいかないのです。つまり、牧会者というか、お世話する成熟したクリスチャンが継続的に関わる必要があるという事です。
TMCはどうでしょう?
TMCでの最初のパートナーはバプテスト宣教団のチャーリーさんで、当時、彼は「いつでも、どこでも、誰にでも始められる教会」すなわちシンプルチャーチを推進していました。それで、ビジョンを分かち合う中で意気投合して東京都心部をターゲットにTMCが始まったのです。始めはゼロから伝道して弟子を育てるつもりで「コーチング団体」として始めました。東京駅八重洲口にレンタルオフィスを借りて、セミナーなどを行なっていました。色々とイベントもやってみましたが、やはり継続的にノンクリスチャンと関わるのは難しいとなり、クリスチャンコミュニティのベースを作ることに転換しました。つまり、伝道より弟子訓練を優先した訳です。
現在、5つのTMCエクレシアで17名ほどのメンバーが忠実に関わってくださっています。「意味ある人間関係と祈りで深まり、広がるキリスト中心のコミュニティ」と掲げているので、時間をかけて信頼関係を築いています。12年で5つのグループが生まれました。毎回、充実した交わり、バイブルスタディ、祈りの時間を過ごしています。メンバーも忙しいのに楽しみにしてくださっています。そこまではできるのです。
しかし、コミュニティが倍加しているか?と問われれば、していません。一人一人は職場や家族に福音を伝えようと努めています。そのパッションを持っています。しかし、メンバーが伝道し、人が救われ、グループを始めるといったようにトントン拍子にはいかないのです。ペースが海外とは違うのです。すると、ではトレーニングを提供しようという話になり、海外のテキストを翻訳して・・となるのですが、あまり成功するとは思えません。
またメンバーの多くは既存の教会のメンバーでもあり、牧師のいる教会の日曜礼拝に通う必要性を感じているようです。そういう訳で、TMCエクレシアは、超教派的という意味ではマイクロチャーチ的ですが、それぞれが独立教会かというと、マイクロチャーチ的ではありません。そういうファジーな立場というのが本音のところです。
まだまだ改革途中
宗教改革では1。聖書神権 2。信仰義認 3。万人祭司 とだいぶ軌道修正できたのですが、その多くは国家教会に留まり、肝心の教会改革は進みませんでした。依然としてカトリックのスタイルや会堂の設定を引き継いでいたのです。私たちはなるべく聖書に忠実に、本来あるべき教会に戻りたいと願っているのです。ヴァイオラさんも、そのパッションが強く、制度的教会からオーガニックチャーチへと提唱し、推進したのです。しかし、前回書いたようにフラットであることを強調するあまり、リーダー(もちろんサーバントリーダー)の存在すら否定しまうところまで行ってしまいました。上下関係ではないですが、役割はあります。「指導」する賜物はあるし、「指導する人」は必要なのです。その賜物のある人は「熱心に指導」すべきです。(ローマ12:8)「勧めをする」=「メッセージする賜物」を与えられている人がいます。その人はそうすべきです。(ローマ12:8)
改革は途中です。私たちも、まだまだ暗中模索なところが正直あるのです。
今後の課題としては・・・
● リーダーは必要だけれど、リーダーに頼りすぎないようにするには?
● 教会を生み出す教会? 教会の倍加は可能か?
● Affinity Group(職種が近い、年齢が近いなどの類似性グループ)は心地よいが、そうでないクリスチャンとの交わりをどう持つか?例えば、年齢を超えた交わりなど。
● 信頼関係を築くには固定メンバーがいいが、新しい人をどう取り込むのか?
そして、あまり人が出たり入ったりだとコミュニティを築けません。
● 少人数グループの場合の参加者のケミストリー(合う、合わない)もある?もともとスモールグループなので、例えば3名のグループの場合、一人が欠席すると1対1になり、良くも悪くも、グループダイナミックスが変化する。あるいは、消滅してしまう可能性もある。
● 仕事で精一杯の社会人クリスチャンが「参加する」以上のことが実際できるのか?
● 信仰歴が違う人たちで、どうバランスをとるのか?初心者向けにすると信仰熟練者にはつまらなくなるし、レベルを上げると初心者はついてこれない。
● 基本、オーガニックチャーチは自立心の強い、成熟した大人達との間ではうまく機能するが、精神的に問題を抱えた人や、障害者、シリアスな問題を抱えた人々を巻き込んでいくのは難しい。全ての人向きではないのでは?やはり、時間をとって関われる専業牧者が必要か?家族が参加する場合、子供たちはどうするのか?
● 人によっては一人で礼拝し、小グループでの分かち合いをしたくないタイプの人もいる。すべての人が「お互いに」のコミュニティを喜ぶわけではない。
● 孤立しがちなオーガニックチャーチ同士をネットワークするには?
などなど・・・・これをきっかけに議論が活発になっていってくれれば、嬉しいです。
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意味ある人間関係と祈りによって深まり広がるキリスト中心のコミュニティ
東京メトロ・コミュニティ
Tokyo Metro Community (TMC)
執筆者:栗原一芳
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