2015年2月10日火曜日

無縁社会




以前、NHKの番組で話題になった「無縁社会」 無縁死が3万2千人という。2030年には日本の人口の4割が一人暮らしになるという。一人になってしまう理由はいろいろある。離婚、退職またはリストラ、そして健康問題。家族がいても不仲で疎遠だったり、「迷惑をかけたくない」として、一人暮らしを選んでいる高齢者もいる。

そして、無縁死予備軍が若い世代にもいる。ネットで繋がっていても孤独な学生。ネットの輪に入れない仲間はずれの恐怖。新自由主義の競争会社では仕事、仕事で友人と呼べる人もなく、一人暮らしは続く。アラフォー、非正規雇用、恋人なし。男女とも非婚率が上がり、少子高齢化は進む。男性で多いのは家庭を顧みないモーレツ社員が社縁が切れると、すでに家庭は崩壊、会社の縁と共に、家族の絆も切れ、いきなり一人となるケース。当然、近隣付き合いもなく、コミュニケーションが断たれる。あとはパチンコか一日TVか。買いだめのカップラーメンの生活はあまりにも寂しい。

ある老人は部屋であぐらをかいたまま一人亡くなっていたという。「孤独死」これではインドの路上で亡くなっていく人達と変わらない。マザーテレサは「死を待つ人の家」の働きを通して、せめて死の瞬間に誰かが側にいて、ケアされ、触れられ、人間らしく死なせてあげたいと奉仕していた。さらに貧困、ホームレス問題。ホームレスの問題も経済的貧困だけでなく、コミュニティ/コミュニケーションの貧困だという指摘もある。災害時に一番被害を受けるのは、こうした絆の無い人々なのだ。


私の知人の精神科医がボランティアで、ある時、公園にホームレスを訪ねた。しばらくすわって話を聞いた。運転手だった彼は手を怪我し、職を失った。別れ際に少々のお金を渡し、肩をハグして去ろうとした。するとそのホームレスが立ち上がって叫んだ。「あなたは天使だ!」と言った。「えっ」と振り返り訪ねた。「どうして、ボクが天使?お金をあげたから?」男は言った。「そうじゃない、あなたは天使だ。オレに触れてくれたから」
                             (写真はイメージです) 



何もできなくてもそこにいる。「いる」というミニストリー。そして、死にゆく人を「看取る」というミニストリー。

東北大学医学部臨床教授であった岡部健(享年62歳)先生は東日本大震災をきっかけに日本型チャプレン=臨床宗教師を提唱。岡部先生は医師として20年近く、在宅での「緩和ケア」と「看取りの支援」に取り組んでこられた。特に宗教の信仰をお持ちという訳でなかったが、終末期の患者さんに接して、どうしても「スピリチュアル」な悩みにお応えすることが大切であると感じてきたという。ご自身、胃と肝臓にがんが見つかり「予後10ヶ月」と宣告された。その時、死に対しての「道しるべ」が無く、真っ暗な闇が広がっている気がしたという。震災後、特に必要を痛感し、「臨床宗教師」の養成のための拠点となる「実践宗教学寄付講座」の開設を東北大学に働きかけ、2012年の4月に開講に漕ぎ着けた。


この働きに賛同し、自らも関わる日本バプテスト連盟 南光台キリスト教会牧師の井形花絵師は、看取りの現場に立ち会った経験からこう語る。

「医者でもなく、看護師は一番近いとは思いましたけれど、看護師でもなく、苦しみのただ中でその方が自分をこえた方に開いていく『管』のような役目になる人が必要だということをすごく感じたんです。・・・その中で、祈りなどを通して、その方々が一瞬でも自分をこえた方にお任せできる、そこに寄り添って誰かと一緒にその道を歩んでくれる人、誰かと一緒に委ねる方、ある人にとっては仏かも知れません、私にとっては主なる神ですが、その寄り添いと、その道をその人のためにひらく人、そのような人が必要だと思いました。」

もう一つ、井形師のコメント
「もう1つは、死に至るまでの間というのは最後の『和解』の場所なのですね。謝ることができる場所、感謝することができる場所。人生を思い返してみられる場所。いろんなことがあったけれども、ああ家族として、この人がいた。たとえ感謝できなくても、あのことは腹が立ったけれども、このことは悪かったな・・・と。臨終の場所、危篤の場所というのは、その意味ですごく重要な場所だということがわかって行きました。」

無縁社会。しかし、人生を閉じる時に誰かに、自分の人生の話をし、受け入れ、肯定してもらうことが求められている。人生のディブリーフとでも言おうか。人生の終わりに寄り添ってくれる人。看取ってくれる人。人間として取り扱ってくれる「よきサマリア人」が必要とされている。

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意味ある人間関係と祈りで広がるキリスト中心のコミュニティ
Tokyo Metro Community (TMC)
japantmc@gmail.com (栗原)

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