2014年6月4日水曜日

DV 家庭内暴力


「この国のために祈る」シリーズ(3)

 4人に一人は配偶者からのDV被害体験者

1982年、有名俳優の実話を小説化した「積み木くずし」が国内で300万出版という話題作となった。ある日突然、不良少女になった娘との200日の葛藤を描いた作品だ。当時、金属バットで息子が親に暴力を振るうなど、家庭内暴力といえば、子供が親に反抗するパターンが多かった。高度成長期の中で、いわゆる「家は建ったが、家庭は失った」現象。お金はあっても親とのコミュニケーションが無くなり愛に飢える息子や娘たちが親のあり方に反抗してゆく。60−70年代のアメリカのヒッピー達もそんな感じだったのだろう。

しかし、それが、90年代に入ると前記事で書いたように子供が子供にいじめや虐待する事件が起り始める。弱い立場のホームレス襲撃、さらに、「誰でもよかった」としてランダムに人殺しをする「通り魔」の出現。オウム真理教などの宗教テロも発生。また内面が空虚なまま、インターネットディバイスが発達し、ネット交際からの事件、そして、ストーカーやDV (交際相手、さらには配偶者から) 、暴力行為が多発し始める。発達障害の急増でキレやすくなった子供や青年も増えた。

内閣府男女共同参画局の平成24年4月の男女5000人を調査したリポートによると・・・

   4人に一人は配偶者からの被害を体験している。
   女性の3人に一人は配偶者からの被害を体験している。
   被害者の女性の4割はだれにも相談していない。
   別れようと思ったが、わかれなかった(別れられない)は男性より女性が多い。
   子供がいるから、子供のことを考えたからが別れる理由の一番。
   女性の20名に1人は命に危険を感じる暴力を受けた。

とある。交際中であろうと、既婚であろうと、DV体験者の6割以上は生活に変化があったという。別れられない理由として・・・

(1)恐怖感
被害者は、「逃げたら殺されるかもしれない」という強い恐怖から、家を出る決心がつかないこともあります。

(2)無力感
被害者は暴力を振るわれ続けることにより、「自分は夫から離れることができない」「助けてくれる人は誰もいない」といった無気力状態に陥ることもあります。

(3)複雑な心理
「暴力を振るうのは私のことを愛しているからだ」「いつか変わってくれるのではないか」との思いから、被害者であることを自覚することが困難になっていることもあります。
ちなみに、毎日暴力を受けるとは限らず、大方の場合サイクルがあるという。「緊張が高まる時期」、「暴力に走る時期」、「優しい時期」。「優しい時期」があるだけに、いつか変わってくれるのではという希望を持ってしまう。

(4)経済的問題
夫の収入がなければ生活することが困難な場合は、今後の生活を考え逃げることができないこともあります。

(5)子どもの問題
子どもがいる場合は、子どもの安全や就学の問題などが気にかかり、逃げることに踏み切れないこともあります。

(6)失うもの
夫から逃げる場合、仕事を辞めなければならなかったり、これまで築いた地域社会での人間関係など失うものが大きいこともあります。


善か悪かしか考えていなかった

神奈川県横浜市にあるNPO女性・人権支援センター(栗原加代美理事長)では、DV被害者、加害者の心と生活の回復を目指して更生プログラムを提供している。このプログラムに関して「舟の右側」編集長の谷口和一郎氏が取材した興味深い記事がある。自分が持っていた、暴力亭主のイメージは、労務者風の酒飲みの大男が大声でどなり、妻をひっぱたく場面。しかし、実際の話に目が開かれた。イメージに反して加害者は、一見まじめで、頭が良くて仕事のできそうなタイプ。共通しているのは白黒はっきりさせたい性格。数人の加害者の言葉を聞いてみよう。

「今、別居中です。物事を正しいか間違っているかで判断してきたのですが、それでは人間関係が続かないと学んでいます。」

「基本的にことばの暴力で、自分は白黒はっきりさせたいタイプなので、理論的に徹底的にやり込めてしまう感じでずっときました。妻はおどおどしています。現在、別居中です。」

「お酒は一切飲まないです。妻は別居したいと言っています。私も白黒つけたい方で、○か×かで、やり込めてしまう。自分のコントロールが利かなくなる。」

「以前は妻の気持ちなんて見えてなかったんですね。正しいか間違っているか、善か悪かしか考えていなかった。でも今は相手の気持ちが最優先です。テーブルを拭かなくてもいいやと思えるようになりましたね。」

男は特に女性の気持ちを尊重するよりも、客観的事実で論理的に話を展開させる傾向が強い。つまり、自分は正しい。攻められる妻が悪いと思っている。ここに登場する加害者は必ずしもクリスチャンではない。しかし、この白か黒かの二分方の考えはクリスチャンであると信仰に結びつけ、さらにやっかいな事になるのではと心配をしてしまう。みことばで相手を責めてしまう傾向がないだろうか。律法的に配偶者や子供を責め立てていないだろうか。少しいい加減に見る余裕こそ信仰なのではないだろうか。


児童虐待

また、子供に与える影響も甚大だ。

配偶者暴力(DV)は、子供にも重大な影響を及ぼします。加害者が子供に対しても直接暴力を振るっていることも少なくありません。また、暴力をふるわれている被害者が精神的不安定さから、子供を虐待してしまう場合もあります。暴力を目撃すること自体、子供に多大な影響を与えます。改正児童虐待の防止等に関する法律では児童の目の前で配偶者に対する暴力が行われるなど、直接児童に向けられた行為でなくても、児童に著しい心理的外傷(心の傷)を与えるものであれば、児童虐待に含まれるとしています。
配偶者暴力(DV)がある家庭で育った子供への影響として、不登校や引きこもり、親や友人への暴力、落ち着きがないなどの情緒不安となって現れることもあります。こういったことは暴力のある生活から離れた後に見られることもあります。暴力を振るう親の子は暴力を振るう大人になると心配する人もいますが、適切な支援が得られれば、必ずしも繰り返されるわけではありません。
                (東京都被害者ネット支援室のQ&Aより)

夫から暴力を受けて自分も不安定であれば、母親が、子供にあたってしまうこともある。親の自己中心的態度による虐待もある。最近、父親が子供に十分な食事を与えず、子供が白骨化した死体となった事件があった。いわゆるネグレクトの典型だ。子供虐待には以下の4つのケースがあるという。

   身体的虐待
   ネグレクト (食事を与えないなど子供のケアをしない)
   性的虐待
   心理的虐待

親はしつけと言いながら虐待をしているケースもある。しかし、親自身が傷ついているケースが多く、深刻だ。子育てについて相談できる友達がいないなど、高層マンションでの孤立化の問題もある。家庭内暴力は、密室の出来事であり目撃者がいないため児童相談所の職員も判断に苦しみ、対応に苦慮しているというのが事実だ。危険であることが明確で子供を保護しようとする際、親の反対に会う事もある。たとえ家庭裁判所の承認があっても、保護者の意に反して児童相談所が子供を入所させ、または委託できる期間は2年までであり、それ以上の入所を継続させたい場合は家庭裁判所に再度、申し立てしなければならない。引き取りに来る親との喧嘩もしばしば起る。


祈り課題
この関係の資料を集めている中で、本当に心が重くなりました。そして、人の罪ということを思わされました。罪とは脱線であり、自分を善悪の基準にすることです。

今も地獄のような状況の中にいる夫婦や子供。また虐待されている子供を救うため命がけの犠牲を払っている児童相談所の職員さん達。彼らのために祈りましょう。子供を保護するために家庭訪問すると、親になぐられたりするケースもあるといいます。社会の痛みを負ってくださっている職員さんたちのために、祈りましょう。ある意味では彼らも地上に「神の国」をもたらすために、神様に用いられているとも言えます。もちろん、最終的にはイエス様にある「赦し」、「解放」、「癒し」が必要です。私達にできることを祈っていきましょう。

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「わたしがこの国を滅ぼさないように、わたしは、この国のために、わたしの前で石垣を築き、破れ口を修復するものを彼らの間に探し求めたが、見つからなかった。」
                                                                                                                  (エゼキエル22:30)

シングルイシューのセミプロ化。ここでもクリスチャンの関与する場があります。この記事を契機に関心を持って頂ければ幸いです。

「児童虐待現場からの証言」 川崎二三彦 著 岩波新書。

 配偶者からの暴力被害者支援情報: http://www.gender.go.jp/e-vaw/

 DV被害者ネット支援室: 

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御心が天になるごとく、地にも成りますように。
For His Kingdom
Tokyo Metro Community (TMC)
asktmc@gmail.com(栗原)


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