2009年6月15日月曜日

脳化社会としての都市

「脳化社会」としての都市

バカの壁で有名になった脳解剖学者の養老孟子は、
都市は脳化社会であると定義する。

人間は頭の中で考えた事を実現してきた。長距離を
走り、空を飛び、海の底にまで交通技術の発達に
より可能となった。寸分たがわず、電車を走らせ、
自然を追い出し、人工的な空間を作り上げてきた。
シンガポールに行けば、ここが昔ジャングルだった
とは思わない。自然は人間にとって、こわいもの。
それを脳の中で考えた技術で治めてきたのだ。
従って、脳化社会とは、予知と制御

(prediction and control)であり、「こうすれば、こうなる」

の世界である。これはラプラスの悪魔を思い起こさせる。

「ある時点での完全な状態と、それを支配する法則が
判れば、その現象は完全な予知と支配と制御の
もとにある」という世界観である。人口空間、
仮想空間では自然は気持ち悪いもの、排除すべき
ものとなると養老は語る。

人口空間 - 都市
仮想空間 - 官僚制、法律、家制度
自然の排除 - 身体、死体、性、暴力、食事、服装

人工空間の都市にあって、住んでいる人間は人工
ではなく、自然(神)の創造物なのだ。都会では、
だから、人間の裸は覆われなければならず、隠れた
ところにトイレを配置する。あたかもそれは存在しな
いかのように。死体は道路に廃棄されず、死んだ人を
なるべく、見なくていいようになっている。死のリアリティ
を失いつつある。

ギネスブックには両腕を事故で無くした男女がロボット
アームで握手している写真が載っている。人工心臓、
人工アーム、人工腎臓、それはある意味では福音だが、
どこまで機械が取り代わるのだろう。脳の記憶を
カセットのように取り出して、他人と入れ替えたら
同人物と言えるのだろうか。
すでに「トランスヒューマン」という言葉さえある。

文字をスキャナーで絵として取り込み、パソコン上で
編集可能な文字とするOCRの発明家である
レイ・カーツワイル氏がシンギュラリティ・ユニバーシティ
の主幹に抜擢されたという。シンギュラリティとは
物理学の用語で「特異点」と訳され、ブラックホール
の先端や、宇宙のはじめの点とされ、ここでは、
行き着く先というような意味だ。

最近は「技術的特異点」という言葉があり、このまま
加速度的にコンピューター技術が発達してゆくと、
機械が人間の脳の働きを完全にシミュレートできる
ようになり、人工知能が人間の能力を凌駕し、果ては、
人口知能が人間社会の方向性まで決定してゆく力と
なるというものだ。コンピュータを脳に直接つなで、
末期ガンの患者に脳内バーチャルでテニスを楽しみ、
ステーキをほおばる楽しみを提供できると同時に、
脳の命令通り動く、ステルス戦闘機も可能になる。
この大学はいかにその技術的特異点を安全に乗り
越えてゆくかの準備をするところだという。


しかしだ、非合理なものは完全排除されるのだろうか?
20世紀初頭、宗教は無くなると言われたが、なんと今は
スピリチュアルブーム。無意識やメンタルトレーニングが
重視され、唯物的無神論は過去のものとなっている。
2008年5月29日の読売新聞には興味深い統計が
載っている。

何か宗教を信じていますか Yes:26% No: 72%

なにか人間を越えた超自然な存在を
感じたことありますか: Yes: 56%

死後どうなると思いますか?
生まれ変わる: 30%

他の世界へ移される:24%
無になる: 18%

科学の分野でもパラダイムシフトが起こっている。
近年のカオス理論。コンピューターの発達により、
初期のわずかな誤差がどう、結末に影響するか
計算できるようになった。人間が完全に初期設定
できるのか?アフリカの蝶が羽ばたくとニューヨーク
で嵐になるといったバタフライ効果が言われる
ようになった。

ハーバードの物理学者リサ・ランドールは「異次元
は存在する」という本を出している。
科学者が見えない異次元が同時並行的に存在して
いると言い出している。量子物理学でも
まったく物質の概念が変わってしまった。
(ミクロ単位では物質は波動となる)実際、量子物理学
の大物達は東洋思想に傾いていった。

脳科学でもどうして物質である脳細胞
(大脳新皮質の140億のニューロン)がネットワーク
されると「意識」が立ち上がってくるのか、いまだに
難問題となっている。いずれにしても今日の科学
では「意識」がテーマになっている。

今後も「都市」と「脳」と「スピリチュアル」はテーマと
なり続けるだろう。

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